2007年 06月 22日

ALS(筋萎縮性側索硬化症) その33

ALSとは何か

ここまでの話はこちらから


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返事は、このカテゴリが書き終わりましてからさせていただきます。
申し訳ありませんがしばらくお待ち下さい。




*** ALSという病気についてボクが見聞きした事を書いています。興味がない方は読み飛ばして下さい ***


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心臓マッサージの手はまだ止まっていない。
若い医師は父の急変を知ってからずっと、蘇生するようにがんばってくれていた。
ありがたい。
でもね、もう冷たいんだよ。

母が医師と何かやり取りをしていたが、何をしゃべっていたのか覚えていない。
姉も急ぎ到着したのだが、どんな会話をしたのか覚えていない。
覚えているのはこの手に伝わった、父の足の冷たさ。
安らかだが、全く血の気の無い顔。

もう結構です、ありがとうございました。
誰が切り出したか。たぶん母だ。
その前に母と姉とボクの三人で、心臓マッサージをもう止めてもらおうと相談したんだっけ?
それも覚えていない。

リズミカルに上下していた医師の手の動きが止まり、馬乗りの姿勢からベッドを降りた。
心電図が示す心拍数、血圧はゼロ…
医師の口から父の死亡と時刻が宣告され、ここに父は死んだ。

医師の口から昨夜からの父の様子が報告される。
夜10時前にナースコールが有り看護婦がベッドまで様子を見に行くも、言葉が聞き取れず、何を訴えていたのか分らないため、体温等を確認したあと言葉をかけてその場を離れた。
午前2時頃の見回りの際は、◯◯さんは寝息を立てて眠っているように見えたので、特に声をかけずそのまま離れた。
早朝の見回りの際、◯◯さんが呼吸をしていない事に気づき心人工呼吸と心臓マッサージと行い、今まで蘇生術を続けていた。

ああ、やっぱり、ボクはなんで昨日の夜病院に来なかったのだろう。
あのまま、真っ直ぐ病院に来ていれば、父に会えたではないか。
ナースコールした父は何を言いたかったんだろう。
看護婦さんには分らなくても、ボクだったら分ったはず、絶対聞き取ったはず。

処置室を出る。
出るように促されたから。
こちらもやらなければならない事がいっぱいある。
葬儀社、寝台車の手配。
実家の片付け。
親族への連絡。
ボクが今日から数日間行けなくなった、仕事関係者へのお詫びとお願いの電話。

父のベッドまわりの片付けをする。
何一つ残さないように。

母が父のメモ用紙を見た。
一番上の一番新しい文字。
昨日母が帰る前には書いてなかった文字列。
いつも読みにくい文字がさらに乱れて、筆圧も弱くかすれた字で書いてあった。

「か ぞ く を よ ん で」

ごめんなさい、父さん、昨日来なくて。
やっぱり来るべきだった。
ナースコールはこれだったんだね。
ボクの所までこのコールは届いていたのに…

by falcon65 | 2007-06-22 20:02 | ALS筋萎縮性側索硬化症


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