2007年 06月 21日

ALS(筋萎縮性側索硬化症) その32

ALSとは何か

ここまでの話はこちらから


コメントをくださった方にはたいへん失礼しています。
返事は、このカテゴリが書き終わりましてからさせていただきます。
申し訳ありませんがしばらくお待ち下さい。




*** ALSという病気についてボクが見聞きした事を書いています。興味がない方は読み飛ばして下さい ***


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10月15日水曜日。
朝5時半に自宅を出ていつも通り仕事場へ向かう。
30分程で都県境の川を越え都内に入る。
そこで突然携帯電話へ自宅から電話。

今病院から電話があって、容態が急変したから家族は至急病院まで来てって!
エッ、急変!? 死んだとは言っていないんだね? わかった!

車を停めて実家の母に電話をする。

今病院からオレのうちに電話があって容態が急変してすぐ来てって!そっちにも連絡いってる?
来てない!アンタはすぐに病院行ける?
オレは都内入ってしまったから少し時間がかかる。
じゃあ、私は近所の人に車乗せてもらってすぐいくから。

母は姉に父急変の電話をして病院へ向かう。
ボクは車を停めて、今日の仕事をキャンセルしていいものかどうかしばし考える。
ボクが行かないと複数の人間に大きな迷惑をかける…

えい、今病院に行かなくて何時いくんだ!
病院まで最短ルートで行ける首都高入口へ車を向ける。
気持ちは焦るが、慌てて事故を起こさないように、スピードに気をつけて慎重に運転する。

急変ってことはまだ死んでないってことだよな。
大丈夫なんだよな。
何がどうしちゃったんだろう。
急いで行かなきゃ。
間に合いますように。
運転しながら色々な思いが頭の中を巡る。

朝の通勤時間、首都高下り線は空いている。
飛ばさなくても30分程で病院最寄りの高速出口へ着いた。

病院のそばで母の乗った車に追いつく。
ところがまだ朝早いので、病院の門が開いていない。
夜間出入り口は裏側、車を回さないといけない。
余分にかかるその僅かな時間ももどかしい。
母の車は入口探しに手間取っている。

駐車場に車を停めるとひとりで父の病室へ走る。
だが病室の父のベッドはもぬけの殻、誰もいない!

えっ、どこに居るんだ?
ボクは呆然と立ち尽くす…

◯◯さんのご家族ですか!?こちらに来てください!
看護士さんがボクの背中に叫ぶ。
重篤の人が入る病室の中から。

病室に駆け込んだボクの目に入ったものは、横たわる父の上に馬乗りになって、テンポよく胸を押している若い医師の姿だった。



ボクはその場で一歩も動けなくなった。
心臓マッサージをしているということは、父の心臓が止まったんだ。
でも心臓マッサージしているということは、まだ死んでないんだ…

ボクの姿に気がついた若い医師が言った。
◯◯さんの蘇生を2時間近く続けていますが、再び心臓が動く様子はありません。これ以上続けても状況は変わらないと思います。これで蘇生術を止めて良いでしょうか?

ええっ!心臓マッサージを止めたら父は死んじゃうんだよね!
心の中で叫んだ。

母が今すぐ来ますから、もう病院の敷地に居ますから、もう少し待って、続けてください。

医師の心臓マッサージの邪魔にならないように、ベッドの足元の方にまわり、父のすね辺りをさすろうとした。
冷たい!
ボクの触った父の足は、二日前に握った父の手の温もりとは全然違い、冷たい。

父さん!
すねから膝、腿へとさする手を動かしていくと、寝間着の股の辺りが更に冷たく濡れている。
…失禁してる…
改めて父の顔を見る。
その顔は…
穏やかだが生気が全くない。

お父さん!
母が病室に飛び込んで来た。
どうしちゃったの!お父さん!
父の顔にすがりつく。

若い医師がさっきボクに言ったのと同じ事を母に伝える。
◯◯さんの蘇生を2時間近く続けていますが、再び心臓が動く様子はありません。これ以上続けても状況は変わらないと思います。これで蘇生術を止めて良いでしょうか?
母が泣き崩れた。

by falcon65 | 2007-06-21 22:01 | ALS筋萎縮性側索硬化症


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